
シリコンにはゲルマニウムに比べてX線エスケープピークが目立たない、また原子番号が小さいため検出器に全エネルギーをかけず、後方散乱する電子が少ない、という特性があります。このことから、低エネルギーガンマ線あるいはX線の検出と、ベータ粒子または外部から入射する電子の検出とスペクトル測定という分野に応用されます。実際、30keV以下の光子エネルギーでは、プレナ型Si(Li)検出器SLPシリーズが使用されています。
近年普及しているシリコンドリフト検出器(SDD)やマルチカソード検出器は、ペルチェ冷凍機を用いたSi半導体X線検出器です。液体窒素冷却のSi(Li)半導体検出器に劣らないエネルギー分解能を有し、高計数率測定が可能とあって注目されています。SDDの構造は、電解効果トランジスタFETを素子の中心部に配置し、更に中心部のアノードに集めるため電位勾配のリングを設けています。これにより静電容量の減少、サーマルノイズの減少、電解集荷効果の向上、漏れ電流の減少を実現。エネルギー分解能が向上し、ピーク対バックグラウンド比が大きくなります。