スピンドルモーター

切削加工機や研削盤などの加工設備には、材料や工具を回転させる回転駆動装置が必要不可欠です。回転駆動装置の一つに、スピンドルモーターがあります。

この記事では、回転駆動装置であるスピンドルモーターについて解説します。また、腕時計製造で培った精密技術と長年にわたる豊富な経験をもとに開発されたセイコーインスツルのスピンドルモータについて、その特徴を紹介します。

スピンドルモーターはシンプルな構成の回転駆動装置

スピンドルモーターはシンプルな構成の回転駆動装置

はじめに、スピンドルモーターがどのようなものか確認しておきましょう。スピンドル(spindle)とは「回転軸」や「心棒」といった意味を持つ英語です。機械加工分野で用いられる場合には、主に回転対象に精度良い回転運動を与える装置である「スピンドルユニット」を略したものを指します。

回転駆動装置の多くは、モーター、ギア、ベルトなど複数の部品で構成されており、構造が煩雑で体積が大きくなりがちです。一方でスピンドルモーターは、動力源と回転部が一体化したモーターを採用しており、その構成が簡素な点が大きな特徴です。

装置の構造が簡素なスピンドルモーターは、他の回転駆動装置と同等の能力を持ちながらも小型です。さらに1軸方向以外のスペースを必要としないため、並列に多くの回転軸を構築することが可能です。

スピンドルモーターの主な用途としては、穴あけや切削、研削工具などの動力源が挙げられ、先端にドリルなどの工具を設置します。また、加工ロボットなどにも活用することが可能で、制御性の高さを活かして高精度部品の加工に用いられています。

スピンドルモーターの製品ラインアップとしては、回転数や出力、サイズ、潤滑方式などの違いでさまざまなものが用意されており、用途に合わせた製品の選択が可能です。

スピンドルモーターに求められる性能

スピンドルモーターに求められる性能

スピンドルモーターは回転駆動装置の中でも小型なため、製造業の中でもさまざまな業界において需要が高まっています。具体的には工作機械や半導体、電子部品加工機などの超精密加工領域が挙げられます。

このような業界に対する要望を満たし活躍の場を広げていくためには、高い制御精度に加えて、さまざまな設備に適用できる汎用性や社会的責任に対する環境性能の高さが求められます。

また、近年は多品種少量生産などの要求も増えており、1つの製品で適用範囲が広いスピンドルモーターの需要が高まっています。

セイコーインスツルの高精度な高周波スピンドルの特徴

セイコーインスツルでは、精密加工分野を中心とした幅広い要望に応えるため、高精度な高周波スピンドルモーターを開発しています。長年の腕時計精密加工で培った技術を元にしており、実際に社内で開発している内面研削盤に採用することで実績を積んでいます。

構造設計の最適化による高剛性化と高精度回転の実現

セイコーインスツルのスピンドルモーターは、回転軸の大径化により高い剛性を確保しつつ、軸受設計や潤滑回路の最適化により高速回転時での高い回転精度を実現しています。
こうした特性により、一本のスピンドルで加工負荷の高い粗加工から、高い加工精度が必要とされる仕上げ加工まで対応することができる点は、セイコーインスツルのスピンドルモーターが持つ大きな強みの一つです。

独自の検査・組立システムによる高い信頼性

精密部品の加工は精度に対する要求が高くなるため、加工設備に対しても高い信頼性が求められます。

セイコーインスツルでは、独自の組み立て技術に加えて、FFT(高速フーリエ変換)による振動解析や運転温度監視、アンバランス修正など、出荷前の検査システムを採用することで、高い信頼性を実現しています。

また、国内メーカーならではの充実したサポート体制を整えており、困りごとや相談がある場合にはスムーズな対応が可能です。

豊富なインターフェースによる高い汎用性

幅広い業界でスピンドルモーターを活用するためには、さまざまな設備に取り付けられる汎用性の高さが重要です。セイコーインスツルでは、さまざまなインターフェース(工具取り付け方式)に対応しており、用途に合わせてオプションで選択することが可能です。

海外製も含め、すでに他社製のスピンドルモーターを使用しているユーザーの場合、インターフェースが合わなければ設備の改造や設備本体の入れ替えが必要になります。しかし、セイコーインスツルでは各種インターフェースへのカスタマイズに対応できるため、既存設備自体の改造や入れ替えをすることなく、比較的容易にスピンドルモーターだけの置き換えが可能です。

また、既存のカタログラインナップでは用途に合わない場合には、カスタマイズの相談も受け付けています。例えば、より高い加工精度や耐荷重が必要となる場合には、セイコーインスツルが持つ油静圧やエア静圧軸受スピンドルの設計・製造技術を活用できます。

シミュレーション技術によるコストと性能の最適化

シミュレーション技術によるコストと性能の最適化

設計段階でのシミュレーション技術活用はさまざまな業界で進んでおり、セイコーインスツルでも、スピンドルモーターの設計時に構造解析やシミュレーション技術を活用しています。

さまざまな条件での固有振動数や各部品に対する応力集中やゆるみ具合、温度上昇時の影響や加工中の負荷などを事前にシミュレーション解析することで、課題の早期確認ができ、開発スピードと製品の信頼性向上を実現しています。

また、性能やコストに影響を与える条件を変更しながらシミュレーション結果を確認することで、性能とコストの最適化を設計段階で実現しています。

潤滑回路の最適設計による環境負荷軽減

セイコーインスツルのスピンドルモーターでは、本体内部の潤滑エアー回路を工夫することで、加工時に使用する潤滑油やエアー消費量を削減しています。

材料の使用量を減らすことは、環境への影響を低減する効果だけでなく、原材料を削減することによる低コスト化にも影響を与えます。

まとめ

スピンドルモーターは回転駆動装置の中でも小型かつ高精度なので、高精密加工など高い加工精度が求められる業界では、これまで以上に需要が高まっていくと考えられます。

セイコーインスツルのスピンドルモーターは、高い加工精度はもちろんですが、独自の検査システムによる信頼性や既存設備からの置き換えも可能な汎用性の高さを実現しています。

高精度かつ汎用性の高い高速スピンドルモーターを探している、既存設備のスピンドルモーターに関して相談がある方は、一度セイコーインスツルにご連絡ください。